物質に入射したマイクロ波の電磁エネルギーが、物質内部で熱などのエネルギーへ変換される現象は、マイクロ波吸収と呼ばれていることが多いようです。この吸収のしやすさを表す代表的な物性値が誘電率です。マイクロ波のような交流電界に対する物質の応答は、複素誘電率として表され、誘電率実部と誘電率虚部に分けて考えます。誘電率実部は、物質に入ったマイクロ波の波長がどの程度短縮されるのかを表します。また、物質中における分極、反射、屈折、電界分布も表現しています。一方、誘電率虚部は、物質がマイクロ波エネルギーを熱へ変換する能力を示します。一般に、誘電率虚部が大きい物質ほどマイクロ波を強く吸収し、発熱しやすくなります。ただし、実際の発熱量は誘電率虚部だけでは決まりません。物質内部に形成される電界強度、周波数、試料の形状や寸法、加熱炉内での配置などにも左右されます。発熱量は電界強度の二乗に比例するため、電界が集中した部分では局所的な過熱が起こることがあります。また、吸収が強すぎる物質では、マイクロ波が表面付近で吸収され、内部まで十分に届かない場合もあります。誘電率は温度、含水率、密度、組成、結晶構造などによって変化します。特に高温で誘電率虚部が増加する材料では、温度上昇とともに吸収が強まり、急激な昇温や熱暴走につながることがあります。
そのため、マイクロ波加熱プロセスを適切に設計するには、実際の加熱温度における誘電率を把握することが重要です。
マイクロ波は、時間的に変化する電界と磁界が互いに作用しながら空間を伝わる電磁波です。物質中では、電界に対する応答は誘電率、磁界に対する応答は透磁率によって表され、これらはマイクロ波の反射、透過、伝搬および吸収を左右します。誘電率実部は電磁エネルギーを蓄える性質を、誘電率虚部は電磁エネルギーを熱へ変換する性質を示します。一般に、誘電率虚部が大きい物質ほどマイクロ波を吸収し、発熱しやすくなります。ただし、実際の発熱量は物質内部の電界強度や周波数にも依存します。Maxwell–Ampèreの式、Faraday–Maxwellの式を連立することで、左にある「マイクロ波が場に落とすエネルギー」を計算することができ、この式が物質のマイクロ波吸収を考えるための重要な道具となります。

